薬ゼミファーマブック

表紙

薬ゼミブックレットシリーズNo.5
高齢者の暮らしを支える薬剤マネジメント
―薬剤師は生活機能の見張り番―

多職種協働による患者中心の薬剤マネジメントの実践を提案
保険薬局の薬剤師が患者中心の薬剤マネジメントを実践するためには、多職種協働が必要です。本書は、医療・介護の連携の重要性について説明し、生活機能低下防止対策に基づき高齢者の暮らしを支えるための薬局独自の取り組みを事例をもとに紹介しています。
2010年1月発行
著=薬剤師・介護支援専門員/一般社団法人日本介護
支援専門員協会会長 木村隆次
発行= 株式会社薬ゼミ情報教育センター
A5判 68頁 2色刷
定価1,575円(本体1,500円)
ISBN978-4-904517-08-6

目次

Ⅰ 多職種協働と薬剤マネジメント(薬剤管理)

1 患者・利用者の暮らしを支える薬剤マネジメント

薬剤マネジメントのPDCAサイクル
患者・家族を含む多職種恊働の薬剤マネジメント
薬剤師がコーディネーターの患者中心の薬剤マネジメントの実際
PDCAサイクルに基づく実際の薬剤業務の確認
COLUMN ケアプランと介護サービス

2 薬剤マネジメントと医療・介護連携

薬剤情報を共有する視点と多職種連携
患者の暮らしを支える視点が大事/調剤報酬・介護報酬における情報共有の評価/入院中に服用した薬剤の情報管理に対する評価/退院時ケアカンファランスの活用/医療機関チームと在宅チームの連携/尾道市医師会の取り組みに見る薬剤師の役割
医療保険および介護保険における薬学的管理とサービス評価
要介護護定と薬学的管理/居宅療養管理指導─キーワードは関係職種との連携

Ⅱ 薬局機能を活かす

1 生活機能低下防止と「まちかどセルフチェック」事業

生活機能低下防止対策と薬剤マネジメント
「生活機能」と「基本チェックリスト」/2005年改正介護保険法で誕生した「基本チェックリスト」/特定高齢者把握事業と把握ルート/地域包括支援センターの役割
COLUMN 特定高齢者
薬剤マネジメントに有効な基本チェックリストの活用
基本チェックリストと生活機能の領域との関係/運動機能と薬剤の影響/栄養改善・口腔機能と薬剤の影響/閉じこもり・認知症・うつと薬剤の影響
『体調チェック・フローチャート』で生活機能低下を防ぐ
『体調チェック・フローチャート』を活用する/エビデンスをもとにした医師への提案/「健康食品等」にも注意を払う
認知症様症状と薬剤の影響
「薬を切ると認知症症状がよくなる?」
栄養と薬剤の相互関係
低栄養の問題意識を持つ

2 事例に見る「健康介護まちかど相談薬局」

「健康介護まちかど相談薬局」とは
薬局は、地域住民のファーストアクセスの場/薬局機能を活用した青森県「まちかどセルフチェック」事業/同意を得てセルフチェックを進める/地域包括支援センターと連携して患者フォローを/患者対応で留意すること/専門家として受診勧奨/研修を受けた薬局薬剤師が「まちかどセルフチェック」事業の質を担保する
「まちかど相談薬局」の取り組みによる波及効果
まちかどセルフチェックの現状/まちかどセルフチェックをバージョンアップ/地域包括支援センターとの関係強化
おわりに
社会保障費の適正化へ薬剤師が貢献するために


著者のことば

 患者・利用者の方々にこんな質問をしましょう。あなたは「多職種協働アイランド(島)」「薬剤師アイランド(島)」のどちらに住みたいですか、と。答えは、当然「多職種協働アイランド」に住みたいと返答されるはずです。
 では、「多職種協働アイランド」には、「薬剤師」は住んでいるのでしょうか。私の答えは、「NO」です。
 この本を手にとってくださった皆さんはどのように捉えているでしょうか。
 在宅医療の充実が社会的課題に発展し、「多職種協働」が大きく取り上げられてはいるものの、薬剤師は、まだまだ薬局の中のみで業務を行い、患者さんが来るのを待っている─こんな状態ではないでしょうか。このことに私は、大変危惧を抱いております。
 2000年に始まった介護保険では、サービスの質を確保するための共通の方法としてケアマネジメントが導入されました。
 ケアマネジメントは、様々な専門領域を超えた生活課題を総合的に把握し、課題解決に向けて具体的な達成目標を定め、計画的にチームでアプローチする方法です。具体的には、インテーク(ケース発見)、アセスメント、ケース目標の設定とケアプランの作成、サービス担当者会議、ケアプランの実施、モニタリング、再アセスメント、ケアプランの見直し、サービス担当者会議……そして終結するといった一連の循環システムです。
 この循環システムは、一人の利用者に対して一人の専門職が対応するのではなく、本人や家族も含めたチーム(多職種)でアプローチする手法です。
 私は薬剤師にこそ、ケアマネジメントそのものを理解してほしいと思っています。この本に記載した内容は、ケアマネジメントの循環サイクルに薬剤マネジメントのプロセスを融合させたものと考えていただければ理解が早いと思います。
 また、本書で紹介した事例はほんの一例であり、一人ひとりの患者・利用者のアセスメントからモニタリングの循環サイクルの中で薬剤師としてどこに着眼し、誰と連携するべきなのかの視点を記したものです。
 「薬」が「暮らし」に影響を与えていることは、意外と多いものです。患者本位の医療の担い手として、これからは単に情報発信としての服薬指導をするだけでなく、生活の場に「出向き」「接し」「聴き出す」、そして専門職としての力を発揮することで社会に貢献してほしいと思います。患者さんの生活機能の変化を通して、暮らしを支えることに大きく関与できる薬剤師という職業に就いた喜びを感じてほしいと願っています。
 本書がその第一歩を踏み出すきっかけとなり、これから進むところの道標となれば幸いです。

2009年11月 紅葉に燃える八甲田山を眺望しながら
木村 隆次