第103回 薬剤師国家試験 総評

第103回 薬剤師国家試験 総評

第103回国試は、102回より難易度の高い試験であった。必須問題は「平易」、理論問題は「やや難」、実践問題は「やや難」であった。例年以上に実際の症例に基づいた問題が多く、薬剤師として患者さんへの適切な対応や臨床的見地からの判断を問う内容が出題されていた。特に「考える力」、「問題解決能力」、「医療現場での実践力」を必要とする問題が多く、より臨床的な問題になっていることは確かである。また、106回から適応される「出題基準」や「改訂コアカリ」を意識した科目の壁を超えた連問など「総合的な力」や「考える力」が必要な問題が出題された。既出問題をベースにした問題は多いが、暗記では対応が難しいと思われる出題であった。しかし、「必須問題」は得点しやすい基礎的な事項の出題が多いため、足切りにかかる学生は少ないと予想される。
※薬ゼミ自己採点システム 2月28日付データより 10,141名の入力情報をもとに作成

必須問題

必須問題は全体に平易~やや平易の問題が多く、解きやすかったと思われる。ただし、実務の範囲において医薬品関連の出題が増加しており、やや難しかったと思われる。また、初出題として、法規に尊厳死(リビングウイル)の問題など社会的背景を問う問題も出題されていた。

理論問題

第102回と比較するとやや難易度が高い問題であった。102回の病態・薬物治療と薬理の連問に続き、103回でも物理と生物の科目をまたいだ連問(問119-120:未知のタンパク質の分離精製と解析についての問題)が出題され、与えられた情報を正確に理解する「総合的な力」や「考える力」が必要とされた。例年通り、実験考察問題、計算問題、グラフや図を用いた問題も多く出題されていた。

実践問題

第102回と比較するとやや難しい問題であった。生物と衛生を実務で繋げた4連問、薬理や薬剤の中でも4連問が出題された。また、図・グラフ・表などを読み解く、「考える力」を必要とする問題が特に基礎(物理・化学・生物)および衛生で多くみられた。臨床現場における患者さんの実例などを基にした症例・処方・シチュエーションなどを読み解くための「考える力」や「問題解決能力」を必要とする問題も多く出題された。各領域において、医療現場で話題性の高い内容が出題されており実務実習の成果を国試に繋げた学修が求められた試験であった。

各科目総評

物理

[難易度]必須問題「平易」、理論問題「やや難」、実践問題(物理:「中等」、実務:「中等」)
[必須問題]物理化学3題、分析化学2題の出題であった。物理の基礎的なキーワードを理解した上で活用する問題(問2)や、99回に出題された高校レベルである有効数字の考え方を活用した問題
(問5)が出題された。既出問題とまったく同じ出題はないため、キーワードの暗記で解ける問題もあるが、高得点を取るには、内容を理解する必要がある。
[理論問題]物理化学4題、分析化学5題、生体分子1題の出題であった。物理化学は、グラフや文章をよく読み、知識を活用する難解な問題(問92、93、95)が出題された。分析化学は日本薬局方の問題が多く(問97、98、99)出題されており、基本知識があれば既出問題レベルの知識で正答できる問題が多かった。
[全体]既出問題からそのままの出題は非常に少なく、問い方を変えた問題が多かった。計算問題、グラフを用いた考える問題、深い知識が求められる問題、他科目の知識を用いて正答を導く問題が出題されている。今後も既出問題やキーワードを暗記するだけでなく、理解して、出題されている内容を応用できるようにする必要性がある。

化学

[難易度]必須問題「平易」、理論問題「やや難」、実践問題(化学:「中等」、実務:「中等」)
[必須問題]近年の傾向通り、構造式が多く出題されており、2-メチルブチル基を選ぶ問題(問6)やR配置の化合物を選ぶ問題(問7)など構造式を問う問題が出題された。また、亜鉛がとりやすい酸化数を選ぶ問題(問9)など化学の基礎を問う内容も出題された。
[理論問題]近年の傾向と同様、生薬の1題以外は構造を絡めた問題や図から判断する問題が出題された。問100のように電子配置を問う問題、化学反応の問題においては単に反応生成物を問う問題ではなく、問102のように反応機構を理解した上で解答する問題も出題された。また、問104(反応条件)、問105(キモトリプシンの活性部位)など考えさせる問題の出題が多く見られた。生薬の問題は、既出問題ベースの出題であった。
[実践問題]近年の傾向通り、生薬の問題(問215)以外は構造を絡めた出題であった。共役系による着色を構造で問う問題(問207)や処方薬の構造から内容を問う問題(問209)、医薬品と金属とのキレートに関する問題(問210)など、考えさせる問題の出題がみられた。
[全体]構造を絡めた問題が多く、暗記ではなく、構造を見て判断させる問題が出題されていた。既出問題のみの習得では解答は難しく、「考える力」や「構造をみて判断する力」が要求される試験であった。生薬は、代表的な日本薬局方生薬の出題が例年に比べ多かった。

生物

[難易度]必須問題「平易」は、理論問題「やや難」、実践問題(生物:「やや平易」、実践:「中等」)
[必須問題]既出問題の理解により解答が導かれる問題であった。例年通り、機能形態学、生化学、分子生物学、免疫学、微生物学から1題ずつ、偏りなく出題された。また、図や構造式を用いた問題は5題中3題であり、心臓と血管(問11)、ヒト染色体(問13)の模式図から判断させる問題や生体成分の構造(問12)が出題された。
[理論問題]考える力を必要とする問題が多く出題された。全10題中、機能形態学3題、生化学1題、分子生物学2題、免疫学2題、微生物学2題が出題された。図を用いた問題は5題あり、実験考察問題としてジデオキシ法(問115)、物理との連問で未知タンパク質Xの分離精製(問119-120)が出題され、与えられた情報を正確に理解し推測する総合的な力が求められた。
[実践問題]生物5題中、機能形態学が3題、分子生物学が1題、免疫学1題であり、102回同様に機能形態学が多く出題された。遺伝子多型による薬物の代謝変化を図から考察する問題が出題された。また、生物と衛生の4連問が出題され、実践では、「日焼け止め」、「サプリメント」についての薬剤師への相談といった、より現場を意識した問題が出題された。
[全体]理論は既出問題の知識に加えて、広く深い知識、図や実験などから与えられた情報を総合的に判断・考察する力が必要とされた。また、実践は現場・実務の視点から関連する生物の知識が問われていた。

衛生

[難易度]必須問題「やや平易」、理論問題「中等」、実践問題(衛生:「中等」、実務:「やや平易」)
[必須問題]健康:環境=5題:5題と偏りはなかった。問題内容は、全体的に既出問題の1記述を必須形式に直したものが多く、7題/10題(問16、17、18、21、23、24、25)であった。予防接種法の定期接種に追加されたB型肝炎ウイルスワクチンが出題された(問19)。
[理論問題]健康:環境=10題:10題であった。近年、図やグラフの情報を読み取る問題が多く5題(問125、127、135、137、139)であった。計算問題は2題(問121、134)と例年通りであった。図や表を用いた「考える力」を必要とする問題は6題(問125、126、127、135、137、139)と例年通り多かった。構造を用いた問題は2題(問132、133)と少な目であった。時事問題としては、近年話題になったハチミツに含まれるボツリヌス菌の芽胞についてなど3題(問124、129、130)が出題された。
[実践問題]健康:環境=7題:3題であった。問222-225や問226-229の4連問の出題があり更に、問223や問227が物理・化学・生物の枠組みでの出題で、今までにない形式での出題であった。また、サプリメント、院内感染、生活習慣病、感染症、中毒原因物質、学校薬剤師、医療廃棄物などは例年通りの出題であった。
[全体]基本は既出問題レベルの知識で解けるものではあるが、図や表などを用いた出題が多いため、問題を解く前にまず問題文を理解することが重要である。構造を用いた問題は3題とやや少なめ、計算問題は3題であった。

薬理

[難易度]必須問題「平易」、理論問題「中等」、実践問題(薬理:「やや平易」、実務:「やや平易」)
[必須問題]既出薬物の作用機序を問うものが中心であった。例年出題される感染症治療薬と抗悪性腫瘍薬の問題がなく、代謝系作用薬が2題出題されるといった偏りも見られた。問34(細胞内情報伝達系の変化から薬物を推定する問題)、問38(副作用から薬物を推定する問題)など今までにない形式や内容の問題があった。
[理論問題]未出題薬物の作用機序を問う内容は15題中10題であり、現場で用いられている話題性のある薬物まで勉強する必要がある。しかし、既出問題レベルの内容を理解していれば解答を導ける問題がほとんどであった。また、構造式から考える問題(問165)は102回から継続して出題されており、構造式と作用機序を結びつける力が求められている。
[実践問題]患者背景を理解した上で、問題解決能力を問う内容が中心であり、範囲も満遍なく出題されていた。また、初めて薬理と実務のみからなる4連問(問262-265)が出題され、患者の治療経過に応じた対応を考える内容となっていた。
[全体]臨床現場でよく用いられている薬物の作用機序を中心に、周辺知識までを問う内容が幅広く出題された。また、DIC治療薬(問159)や慢性閉塞性動脈硬化症治療薬(問258-259)など病態を理解した上で治療薬の作用機序につなげる問題も出題され、疾患に対して病態・薬理の両面からアプローチする力が求められている。

薬剤

[難易度]必須問題「やや平易」、理論問題「難」、実践問題(薬剤:「やや難」、実務:「平易」)
[必須問題]既出問題レベルの知識を中心とした出題であった。構造(問45)や写真(問53)を用いた出題や内容の理解が求められる問い方(問46)など切り口の工夫が見られる出題であった。例年通りバランスの良い問題配分(薬物の体内動態7題、製剤8題)であり、既出問題の知識が定着している学生は高得点できたと思われる。
[理論問題]既出問題レベルの知識を中心としているが、解答を絞るには未出題の内容についても把握が必要な出題(問166、問174、問176)が多かった。また、知識を活用して解答するグラフや図の問題が3題(問172、問177、問178)、計算問題が2題(問173、問175)出題されていた。また、17局改定内容についても触れた問題も昨年に引き続き出題されていた(問174)。
[実践問題]現場で実際に使用されている薬剤を中心とした出題であった。近年の既出問題で出題されたテーマが多数出題(問269:インスリン製剤、問270:CYP1A2の相互作用、問275:抗菌薬の点滴投与、問279:自己乳化型マイクロエマルション製剤)された。
[全体]必須は昨年と同様に既出問題における出題内容の把握で高得点を期待できる出題であったが、理論と実践が昨年と比較して難化傾向であり、内容の理解や新傾向内容の把握が必要であった。計算問題数は昨年と同等であり、グラフや写真を用いた出題も多数出題された。

治療

[難易度]必須問題「平易」、理論問題「難」、実践問題(病態・治療:「難」、実務:「難」)
[必須問題]病態・薬物治療が10題、情報・検定が5題の出題であった。今まで国試に出題されている基本的な疾患に関する出題が多く、解きやすい問題が多かった。問65の重症筋無力症に関しては新規の出題であり、正答は困難であった。情報では、問67のコクランライブラリーを選択する問題、問70の禁忌の詳細に関しての問題が難解であった。
[理論問題]難易度の高い問題が多く出題されていた。問181は症候に関する問題であり、詳細を問う難しいものであった。また、情報・検定は6題の出題があり、特に問192~193は連問での出題で、内容も新傾向であったため、正答を導くことは困難であった。問191は疫学の内容であり、やや難しい問題であった。
[実践問題]病態は、出題頻度の高い腎疾患、呼吸器疾患などからの出題が多いが、患者の検査値などを読み取る「問題解決能力」を必要とする難易度の高い問題もあった。また、問301の敗血症に関しては新規の出題であった。検定の問304-305はデータの解析を行い解答する「考える力」を必要とする問題であり、正答を導きにくい問題であった。
[全体]必須に関しては既出問題ベースであり、得点しやすかったと思われる。理論、実践は例年通り難しいものが多く、特に理論ではADHDなどの新規疾患の出題や検定の問題が多く出題され、難易度は高かった。また、実践問題に関しては検査値から詳細を読み解答させる出題が多いことやあまり出題されていない疾患での出題もあり、解答が困難なものがあった。

法規・制度

[難易度]必須問題「平易」、理論問題「平易」、実践問題(法規:「平易」、実務:「中等」)
[必須問題]出題範囲には大きな偏りがなかった。近年の既出問題の関連知識で対応できるものが多かったが、問72(病院内の設置施設)と問76(国民医療費に帝王切開による分娩を含む)は近年出題された内容ではない。また、問75(薬害)は毎年出題されているが、原因薬物で治療されていた疾患を問う形式に出題の工夫が見られた。新傾向としては尊厳死の社会的認知もあってか、問79(リビングウィル)が初出題であった。
[理論問題]代表的な範囲から出題が目立ったが、医療保険・介護保険などの出題はなかった。問題内容は、既出問題から得られる知識で解答を導ける記述が大半であり、得点しやすい構成であった。問141(調剤された薬剤の規定)、問148(増分費用効果比)が初出題であるが基本内容であった。また、問150(喪失体験)は参考書で紹介されることは少ないが、問題文の意図を汲み取れば解答できると思われる。
[実践問題]法規の出題範囲に偏りはなかったが、医療保険・介護保険の出題があった。全体として過度に難易度を上げずに、薬剤師として必要なことを中心に問う良問が多い印象であった。また、昨年と同様に、様々な場面で薬剤師としての対応を求める実践的な問題が増加している。
[全体]出題内容は、薬剤師として必要な法令・制度を満遍なく問う構成であり、102回国家試験に比べて既出問題から得られる知識で対応可能な問題が多かった。直近の国家試験と同範囲の出題が目立ち、薬剤師として必要性の高い範囲は今後も繰り返し出題されると予想される。

実務

[難易度]必須問題「中等」、実践問題(実務の単問)「やや難」
[必須問題]近年の出題傾向と多少の変化があった。定義・用語・薬剤師の業務関連などの出題が近年は目立っており、医薬品関連の出題が低下していた(第102回は医薬品関連:3/10問)が、今回は医薬品関連の出題が6/10問で2倍となり、定義・用語・薬剤師の業務関連は0/10問であった。
[実践問題]出題傾向としては例年通り、計算問題が4/20問で出題されていた。しかし、検査値やスケール、添付文書の記載内容などの情報を活用する問題が8/20問であった。考える力を必要とする問題の出題が増加していた。
[全体]必須問題は比較的得点しやすい問題が中心となっていた。しかし、実践の問326~345の20問に関しては、上述したとおり、考える力を必要とする問題が多く出題されたため得点しにくかった学生もいたと思われる。また、計算問題以外は新規の内容の出題も目立った。

薬ゼミの模試で国試を読む!(薬ゼミ模試と国試の比較)①
薬ゼミの模試で国試を読む!(薬ゼミ模試と国試の比較)②

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